絶対価値

ここまでドス黒い感情が湧き出たのは久々です。
……人間だもの。

なんだろう、この気持ちは良く自分でもわからない。

帰ってくるなり弟は試験の結果を私に見せつけた。
散々見下げられたってやればできるんだぜって。
馬鹿でもやればできるんだって。

私も驚いた。それで心から喜んだ。
アイツはそれまで耐えて耐えて耐えてやり抜いたのは私が一番知ってる。
色んな誘惑があったと思う、迷いがあったと思う。
けど馬鹿だからこその努力の結晶がここにあったと思った。

確かに話を持ち出したのは私だけど、無我夢中で教えてやろうってのは私だったけど。

暗に漂った空気は言う「この程度でなに喜んでるんだ」。

確かにそれは正しい。
倫理上の帰結主義。高みを掴む人間の理想。
私の気分が優れないのこそ理から外れたエラー思考。

けど一度馬鹿に与した私だから、弟の馬鹿げた主張に気付いた。

きっとこの結末は、私と弟にしか価値を見出せないんだと思う。
構わない。
こんな温かい二重の勝利に水を注されるぐらいなら。

要するあんたは満足感が欲しかったんだね。良くやったって言葉のご褒美が。
今日はもう遅いけど、明日はご馳走にしよう。
満足感はここにある。ここにあればいいんだよ。